2021.05.01危険予知 危険感受力、認識力の向上(Contamination:コンタミとは)
コンタミと称される、我々石油業界で耳にする事象は、コンタミネーション(汚染、汚濁)を意味します。
ある化学物質に対して異なる成分の化学物質を混入させ、本来の目的と異なる汚染された物質にしてしまうことです。
三号軽油やジェット燃料と呼ばれる混合された製品のときには、汚染はされていないわけだから、これはコンタミとは言わないのでしょうね。
さて、我々の繁忙期とされる冬季も終わり、閑散期と呼ばれる季節になりました。
冒頭のコンタミ事故は繁忙、閑散の区別なく、いつでも我々の仕事に対する成果として発生する可能性があります。
混油防止システム搭載車両で適切に運用を行えば、機械的な損傷が発生しない限りにおいては、このような事象が発生し得ないことは皆が知るところなのですが、全国規模でみると僅かながら発生してる原因の多くはヒューマンエラーです。
本来の目的通りの結果を導くために必要な、適切な運用、操作をしなかったことによるところが大きいことは疑いようもない事実です。
トキコ製のコンユ防止システム運用時にアマチュア無線と思われる強力な通信によってダウンするといったことも経験したこともありましたが、基本的には底弁が強制的に遮断されるので他のハッチが解放されるということは無いです。
前トリップの積荷データが復活することがあったかもしれませんが、改善されていたと記憶します。
エアー不足による底弁の開閉不良も考えられますが、夜間配送ではない限りは空曹確認を行うことがマニュアル化されていますので、ハッチ内に油が残っていたことによる混油であれば人的なミスとして処理されるかと思われます。
顧客の満足を得る目的、コンタミ事故を防止することに着目するのであれば、多少のコストが発生しても導入することの利益の方が大きいと考えられます。
すべての車両に、この混油防止システムを搭載して適切に運用することが、コンタミ事故を無くすうえで重要なのは承知していても、需要と供給の関係もあります。
平成30年時点で移動貯蔵タンクは日本全国に6万基程度でしか存在せず、近年減少傾向が見込まれる中、低廉な価格で混油防止システムを導入することは期待できないと帰結するところです。
以前、JOMOのローリーに乗務していた頃、送油ホースに巻いているクルクルコードが5万も6万もするんだと当時の運行管理者に言われたことがあります。
ホースの端をもってUの字にして持ち上げてホースボックスに収納をするところ、一時でも引きづってしまう。
そのようなことが幾度と続けば、クルクルコードのカールカバー部分が削れ、ケーブルコードの根元部分、接合部分といった弱いところに断線といった不具合が出てきます。
金がかかるんですよ。
安全のために金がかかることはしょうがない。
惜しんではいけないということ発想は容易くとも、その原資はどうするのか?
という問題も出てきます。
会社の設備投資、修理費、部品代にお金をかけるということは利益が減る。
利益を圧縮し、且つ運転資金も確保していなくてはならない。
支出ばかりを増やしても、どこかの国家予算のように国債なんて出せないですから。
消費、需要低下に伴う輸送量の減少は、身体に係る負担が減るという側面もありますが、売り上げが減るわけだから、今までと同じではいられなくなるかもしれないという不安はついて回ります。
日本全国で発生するコンタミ事故の大半がヒューマンエラーであることの現状を鑑みると、混油防止システムの機能は秀逸である。
しかしながら、運用をする我々が本来の目的を没却してしまう、手を抜いた安易な操作方法を選択、行動をしてしまうことで、業界における信用を著しく喪失してしまうことの責任も考えなくてはいけません。
マニュアルになっているがために手を抜くための抜け道なんて、仕組みに精通すればするほど見つけられるんです。
そもそも、混油防止システムの登場は、システム的に一定の作業行動を行わないと、安易に積載油種が下せなくなるといった、強制的に確認作業に相当する工程を実行させるためにプログラムされたものです。
以前の所属会社で聞いたことがあるのですが、荷下ろし確認書の作成しかり、油種確認に伴う重複した工程、そのうちのどれか一つでも確実に行えていたら事故は防げると言われたことがあります。
あれもこれもみんな大切だと、重要だとなってしまい、どれを確実に行えばよいのかが不明確になっている、オペレーションが複雑になっているといった弊害がありました。
皆が手を抜く、省略してしまうことの要因は煩雑化されたマニュアルにあるのだろうと思い至ります。
どれも大切なんです。
それは間違いない。
我々の職業は危険物を取り扱い、真正な燃料供給を行う、燃料使用する機器、自動車、プラントは非常に高価なものが多いです。
そこに汚染された(コンタミネーションされた)不適切な燃料供給による経済的な損失の責任。
これは機械の故障や工場の操業停止に至る可能性や、汚染された灯油による暖房機器の異常燃焼によって発生する家屋火災。
人の身体生命、財産を侵害する可能性が十分に予想されることであるから、国は一定量以上の危険物を取り扱うには、我々資格者にしか触らせないと安全を担保させているんです。
その安全な燃料油の取り扱いについて、使用者は有資格者が適切に扱うことを半ば強制させるためにマニュアルを作った。
それでもヒューマンエラーが発生してしまうから、尚、強制的な作業工程を強いるために混油防止システムを誕生させた。
しかしながら、コンユ防止システムを搭載したところで、想定外の運用をしてしまうことが、本来の目的を没却させてしまうこともある。
では、どうすればよいのか?
危険感受力、認識力の向上。
「やってもらって当たり前」、「負担のある行動を求められること」や、「やらされているのだ」といったお客様気分でいることの結果は、自らが主体的に考えて行うそれとは違ってくることは経験しています。
常日頃伝えている、「ただ運べばいいんでしょ?」といった考え方から、主体的に「自分の行動が周りに与える影響」「なぜ自分は働いているのか」、「なぜこの仕事を選択しているのか?」「この仕事によって得られる対価が如何に自分と自分の家族の安定に重要であるのか?」そういった行動の理由や結果にまで意識を働かせて行動をする。
話が飛躍していると感じるかもしれませんが、我々人間は、こういうことが出来るから万物の霊長とまで呼ばれているのであって、場当たり的な行動をすることで、我々の社会的な信用を失うことは避けたいと思います。
周りはみんな、実務経験豊かな有資格者ばかりですから、やって当たり前、出来て当たり前なのであって褒められることは少ないですが、そういった環境の中で、結果を出し続けていくことに差が出てくるとも思います。
当たり前のことをずーっとやり続けることが出来る、安定した技術の提供ができる。
だから社会的な信頼に応えることが出来るわけですから。
A当たり前のことをBバカにしないでCちゃんとする。って文言を出光興産㈱で聞いたことがありますが、続けられることの尊さと難しさは皆も知っていることだと思います。
さて、コンユとかコンタミとか言われるこの現象は、危険物取扱者たる我々からしても、如何に汚染された製品を給油したことで不都合ことが起こり得るかについても正当な知識を備え、万が一億が一にも混油といった現象を惹起せしめたときの自分の置かれた状況について、事前に予測すること。
ただ単に、混油をしてしまったときは、直ちに販売の停止を求め、且つ事務所に連絡をせよ。
といった、通り一遍等の問答だけを用意しただけでは、言い出せなくなってしまうかもしれない。
言うか言うまいかを悩んでいる間に、給油に来た車が会計を終えエンジンを始動してしまうかもしれない。
直ぐにエンジンがかからなくなるということは無くても、何百m、何キロと走行をしてエンジンが停止してしまう。
2組目、3組目のお客様が購入した灯油から、汚染された灯油を給油しているかもしれない。不本意極まりない隠ぺいといった結末を防ぐ正確な知識の習得と、信頼を失ってしまうかもしれないけれど、被害を最小限に留めるための覚悟をする機会にしようと考え至りました。
危険物を大きく分類したときに我々が日常取り扱う乙種4類に該当する危険物は常温(20度)において引火性の液体である特徴の理解でよろしいが、理解しやすいもので第一石油類でのガソリン、第二石油類である灯油、軽油。第三類である重油と大別ができるがこれらは引火温度によって分類がされている。
この石油類の精製についてはトッパーと呼ばれる石油蒸留装置にて原油を加熱蒸発させ、気化温度によって分別をしているといわれています。
その性状についてはガソリン、法定比重0.75 灯油軽油が0.80~0.85 重油0.85~0.90
(参照JIS)
これらの液体をピストンシリンダー内でガソリンについてはスパークプラグを用いた燃焼爆発、軽油については圧縮熱を用いた燃焼爆発をさせ、ピストンシリンダーの動力とする効果を期待している。
では、本来の着火温度、引火温度、発火温度のうち引火点について詳細に確認をしてみると、
ガソリンは21℃未満
灯油は・・21℃以上70度未満
軽油は・・同上
重油は・・70℃以上200℃未満と区別をすることができる。
これらの引火点による適切な燃焼範囲(ガソリンべーパー1.4~7.6%)を期待して制御しているところ、不本意な燃焼が発生させる経済的損失や身体生命、財産にも及ぶ損害まで考えると、莫大な賠償問題になることは明白である。
ひとたび、混油の事実を知り、事実の申述を躊躇してしまう心理は分らぬでもないが、してしまった結果が変わることはあり得ないわけだから、保身のために過少申告、虚偽申告をすることの不利益よりも、事態の収拾を第一にする!の一点に注力し所属会社の協力を求めることを本位として欲しい。
この事実に伴う不利益の程度、躊躇によって発生する結果の予想、事態の悪化が如何様なものであるか。
躊躇によって結果的に隠ぺいを選択せざるを得なかったという抗弁であっても、前述の性状、劣化した製品の異常燃焼によって適切に稼働しなくなる車両が出てくること、家庭用暖房機器(ストーブ等)の異常燃焼による家屋への延焼、人命の危機が差し迫っているという状況をやり過ごさない。
注油直後の地下タンク内では、異なる製品の注油で攪拌がなされ発覚が遅れたとしても、時間の経過に従い比重という特徴から異なる油種が高濃度で滞留している層ができることになる。
その場ではやり過ごせたとしても、地下タンク内で異なる性状の油種が漂う様を思い浮かべることとなる。
やっちゃいけない、してはいけないことだと知っているから、言いづらいのだという理屈は理解できるが、不本意な結果ではあるけれど、そのような状況を作らないための安全に対する意識の啓発ではあるのだけれど、被害をより少なくする為には、過少申告をせずに事実を申述するということを事前に心に決めおいて、いざというときには、心に強く決めておいた混油の事実を申述する覚悟を、今ここで決意してください。
仕事終わりに冗談で言うこともお勧めしません。
冷やかしをした、嘲笑のネタにしたという事実が、いざというときに、正直に真摯に報告することを躊躇わせてしまう。
そう思います。
さて今回はコンタミネーションを題材にしましたが、ヒヤリハットした事象の共感は、危険予知をするための材料として有効であるから、幾つもの運送事業者が啓蒙しているところです。
昔から危険予知をする認識力を涵養させることが日常の安全安心な振る舞いとなり、その結果が会社にも、そこで働く我々にも享受される。
極論、このことが、どれほど尊いことなのかという理屈を今一度はっきりと自覚をし、認識ができていないときの意識の作用が低調であることは、皆が経験していることですが、含蓄が増えても認識力の不全不足が失策失敗を招き、我々の提供する尊い仕事が忽諸に、まるで価値のないもののように非難されることもあり得ることまで充分に考えを巡らせないと充実した人生を送ることが出来なくなってしまう。
人の体に感覚して受容した事項は我が心の中に強く印象することで、貴重な経験として心の発達、助成に大いに寄与し、認識力の正確な向上をなす。
人の経験したヒヤリハットした貴重な情報の共有は、自分の中で共感となり、自分だったらどうするのかといった検討を加えて、実践をしていくことでより高等な観念や思想になっていく。
自分の実体験だけでは足りない貴重な情報を如何に有効に活用するのかという考え方は、場当たり的な反応だけで済ますのではなく、自分の実体験での感覚に加工し、修飾した結果は、より詳細な深い考察を加えたことで、貴重な他人の実体験、経験を自分が経験をしたかのような高等な疑似体験であって、さも実際にあったこととして処理をしていくことができ得る。
誰もが機会の提供を受けられる世の中でも、選択によって発生した結果を享受するのは自分なのであるから、自分の振舞いによって発生する周りの影響にも真摯に向き合わうのが責任だと思います。
子供じゃないんだから、集団社会を形成している我々構成員の意識がいかに重要であるかも今一度理解に努めましょう。