働き方改革と運行管理者の将来への影響

 

2023.03

働き方改革と自己保健義務

https://youtu.be/1NU-XiStKE8

暖かくなってきました。

繁忙期は過ぎたと言っても良い陽気です。

日本にいる運行管理者さんの多くが言っていると思うことが一つ。

少し暇になると事故が増えるなぁ。

・・そうなんです。

 

物量の多いときと比べて、暇になった途端に発生する事故を思うと比率は高い。

と言う印象を受けます。

 

周りの環境も、忙しいからしょうがないよね?

とドライバー寄り、運送会社寄りになって思ってくれる人もありますが、忙しさが落ち着いてきたとき、閑散期になったときとでは、受け取り方が変わっていると考えられます。

どちらかというと厳しめの態度に変わると思っておいた方がよろしい。

 

「一度大丈夫だった。」からと続けていくと、自分の首を絞めていくこともあります。

相手方からしたら、大変そうだったから我慢していたけど、当たり前に続けるのであれば、ルールを変えます。

若しくは厳格に運用します。といった具合です。

特定のお客様に限らず、KPIも八潮も、その他の関係先から厳しいお叱りの言葉が出ることもあります。

当人の他に、会社全体で出入り禁止にでもなったら、生活に直結しますので、他人事だと思わずに十分に注意してください。

 

今までのは、周りの環境の話。

次は自分の心の持ち方の話です。

自分自身にも言えることですが、ついうっかり=これくらい、今回は大丈夫だろう。

といった自分本位な考え方をしたときに、不本意な結果がついてくることが多いと感じます。

 

皆さんも、40年、50年と人生経験は豊富です。

聞いた話、感じた事柄を経験、疑似的に自分にあてはめてみて、若い子たちには難しい『結果の予見可能性』というものについて理解を深めることはとても意義深いことだと思いますので。

さて、働き方改革²と世間も、三石も言うようになってきました。

働き方改革が始まったのは2018年のことですが、中小企業が多くを占めることから、完全な実施までに猶予があったので、最近になって取り上げられるようになったものです。

 

過去に何度かに亘ってお話をしてきましたが、この働き方改革は、我々労働者を始め、その家族といった国民の生活に深く関係する就労環境を整備することで、健康を起因とした事故や、過労死といった悲しい結末にならないように慮っての改革です。

それまでの経緯を理解することで、建設的に日々の生活に反映をさせていきましょう。

 

 

(目的)労働安全衛生法

第一条      この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環の形成を促進することを目的とする。

 

安全とは

労働者の就労に関連した異常な出来事(事故)によって身体又は健康を害される危険を除去させること

 

衛生とは

労働者が就業上接する物質や設備環境を健康障害が生じる恐れのないものにすること

 

(労働者の安全への配慮)労働契約法

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

安全配慮義務の定義

労働者が労務提供のため設置する場所、設備、若しくは器機等を使用し、使用者の指示のもと労務を提供する過程において労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務

 

 

 

 

 

因みに私たちが働いている現在の状況は、労働契約法に根拠があります。


そもそもこの法律が出来たのは、平成19年12月公布、と最近のことなので、これ以前に労働契約をしたという人は民法623条に根拠があります。

雇用)

第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

(目的)労働契約法

第一条      この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

 

 

業務上の疾病・・別表第一の2 昭和53労令11号 (2010改正で長時間業務が追加)

その他業務に起因することが明らかな疾病・・

相当因果関係・・一定水準を超える時間外労働、不規則、深夜作業環境

安全配慮義務の違反に該当するか

結果の予見可能性・・健康を害するものかどうか

・具体的内容・・・・・身体、精神的負担の有無

・消滅時効の起算点

不法行為(注意義務)、債務不履行(配慮)

相当因果関係

長期の荷重業務

業務軽減措置を怠った

・業務上認定されること・・特段の反証が無ければ認定される

 

川重事件S59.4.10  措置を講ずる〇 結果債務×

大東マンガン事件 S60.12.23大阪 違反防止措置の立証

長崎じん肺 H元.3.31 詳細× 抗弁× 高度な〇

大阪泉南アスベスト H26.10.9 

住友電工シールネット事件 H26.8.29松戸 6か月80H残業 業務上軽減すべき

中野運送事件 H19.12.14 熊本 

O社事件  H25.3.13 神戸

 

安全な運転をするために日々の睡眠時間を確保することに気を使っているよ。

という方が見受けられます。

眠くなったから寝るのではなくて、体調を整えるために早めの就寝。

睡眠時間を確保するというのは自制が必要ですから、とても大切なことです。

 

そして、「体調を整える」とは、睡眠時間の確保だけに限りません。

働いている時間が多すぎて、体調を整えることが出来ないでいる。

そこに相当因果関係があるという判断をしますから、時間外労働を抑制しなければならない。

仕事に充てていた時間がフリーになりますから、これを健康の増進に使う。

もちろん、精神衛生上、心豊かになるために使うことを否定するものではありません。

 

ですから、この場合の整えるには、日々の生活にウォーキング等の運動を組み入れることやストレスを減らして暴飲暴食をしない、健康で良好な状態に導く。といったものが含まれるという解釈で良いかと思います。

 

心疾患、大動脈解離などの大きな病気の他に、睡眠時無呼吸症候群といった不意に起きるマイクロスリープ(瞬間的な寝落ち)によって、意識のない状態で運行をしている可能性について早期発見、早期治療をすることで、まさしく、不本意な結末を予防することに繋がります。

肥満気味である、日中に抗いがたい強い眠気を感じることがある。

我々の運転する車両は大きなものですから、駐停車をする場所が限られます。

僅か、数分の休憩をする事で回復する体調も、たくさんの荷物を運べる大きな車は効率が良い反面、容易に車両を止められない現実があります。

 

 

何かしらの異常な出来事があったとき=事故があったとき

(他人の被害に限らず、労働者自身も)

 

使用者責任 時効3年× 5年〇 S61.3.19 

債務不履行 時効5年〇

 

使用者に留まらず、 又は著しく不作為

国家賠償 H26.10.19

 

 

業務起因性・・・治療機会喪失という業務起因性×

 

自己保健義務・・労働安全衛生法69-2

(健康教育等)

第六十九条 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。

 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。

 

事業場における労働者の健康保持増進のための指針・・労働安全衛生法70の2-1

(健康の保持増進のための指針の公表等)

第七十条の二 厚生労働大臣は、第六十九条第一項の事業者が講ずべき健康の保持増進のための措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。

 

前述の運用がなされていても、一方で自分の健康を守る義務を怠ってはいけない

 

未成年者への規制があるが、これは、未成熟であるから

・自身に不利益を招く恐れ

・未成年者のために、回復不可能な失敗の阻止

・発達権の保障に不可欠な干渉

をしているのであって、成年者は自分の責任である(責任能力がある)という考え方に立てば、無視はできない。

 

ここで、繰り返しになるが、事故、損害が発生したときの責任の所在が、先述の使用者責任、債務不履行に業務起因性の有無も併せて考えてみると、

 

・業務に相当因果関係が無い環境の創設(労働時間、作業環境)

・法の主旨、具体的に活用する方法の告知

・関連法の理解

そして大切なのは、今ある環境でどうするべきか?という考え方。

最低限でも・会社や社会に不利益なことをしていないこと

・会社や社会に悪い影響を与えていないこと

そして  ・自分のする行動が価値あるものであると主張できること。

 

会社としては利益を追求しつつも、「健康配慮義務から」より緩やかに「業務軽減措置」というものを考えないといけない時代になってきました。

 

みなさんには、法令遵守に限らず、道徳的堕落の防止や、秩序、風紀といった集団内で起こる他者の動揺の有無等についても、モノを考えられる人間ですから。

考えを巡らさないといけませんね